グラフィックデザイナーはやめとけ!と言われる4つの理由とその真相【経験者が語る】

DESIGN

グラフィックデザイナーに興味があるけど、ググってみても体験談を聞いても「やりがい搾取」 「体壊す」などネガティブワードをよく耳にします。
本当にやめた方が良いのでしょうか? 解説します。

ドーモ!Tatsumoです!
デザイナー歴7年。
インハウスデザイナー→現在フリーランスのグラフィックデザイナーとして生計を立てています。

この記事では、これからグラフィックデザイナーとして就職・転職を考えている人に向けて、グラフィックデザイナーの現状、「やめとけ」という言葉の真意を経験者目線でお話しします。

※待遇・給料などは会社によって千差万別です。以下の記事はあくまで個人で調査したデータ、体験・主観をもとに書いています。

グラフィックデザイナーの仕事とは

一般的に”グラフィックデザイナー”というと商品のパッケージや印刷物(ポスター、雑誌、折込チラシ、)などをデザインするイメージを持つ方も多いかもしれません。

実際は、広告媒体だけではなく、公共施設のロゴマークやサイン、イベントのヴィジュアル、webサイトのモーションデザインや文字のデザインまで、グラフィックデザイナーの仕事の範囲は大きいです。

さらに、VRなどの技術が発達してきたことで、ヴァーチャル空間のデザインなどもグラフィックデザインの領域といわれています。

グラフィックデザイナーという肩書きを持つデザイナーでも商品開発(プロダクトデザイン)から手掛けたりする方もいます。デザインのジャンルは沢山ありますが、その垣根は徐々になくなってきていると言えます。

グラフィックデザイナーはやめとけと言われる4つの理由

やめとけと言われる理由のベスト4はこれじゃないでしょうか?10年以上前から言われている気がします。

  • 給料が割に合わない。
  • 残業が多い
  • 体力的にキツイ
  • 将来性に不安がある。

一つずつ解説していきます。

給料が割に合わない。

給料が割に合わないと感じている人はデザイン歴10年以内の若手を中心にとても多いようです。

基本的には作るのが好きな人達が多いので、お金は二の次みたいな業界全体の風潮があることも原因ですね。モノづくりに携わりたい人が多いので、薄給でも希望者がいなくならない→人件費を買い叩かれる構造。

グラフィックデザイナーの平均年収は?

求人情報・転職サイトDODA調査による「平均年収ランキング2020」による調査によると、

会社勤務のグラフィックデザイナーの平均年収は336万円となっています。

「平均年収ランキング2020」の90位にランクインしています。
どうみても良いとは言えませんね。

しかし、この平均年収を考えてもあまり意味がないです。
なぜならグラフィックデザイナーと一口に言っても仕事内容は人それぞれ。

  • 大企業のブランディングプロジェクトに参加するアートディレクターのようなことをやるデザイナー
  • デザインの他に、折り込みチラシや求人広告制作などのDTPオペレーションを兼任しているようなデザイナー

↑↑の2人のデザイナーは仕事内容もまるっきり違うし、収入もかなり差があります。

デザイナーはピンキリの世界です。

超一流のデザイナーにもなれば、1プロジェクトで数千万などの依頼料になることもあるのでしょう。
誰でも駆け出しの頃は安月給です。その修行を乗り越えた後、どう登っていけるかは本人のスキル次第です。

フリーランスの給料はどれくらいなのか?

フリーランスは、個人のスキルや実力に依るところが本当に大きいので、さらに差は激しくなります。

しかし会社勤めと比べ、フリーランスは不安定というリスクがある分、稼ぎは大きくなることが多いです。
(・経費を除いた分が全部自分の収益になる・そもそもデザインは利益率が高い)

※あくまで個人的な感想ですが、会社勤めの最低ラインの給料が13-14万だとすれば、フリーランスの最低ラインは19-20万くらいにはなるかなというのが、個人的な肌感です。

私は現在、地方でフリーランスデザイナーをやっております。
仕事の実情やお金に関することも書いていますので、よろしければこちらの記事もご覧ください。↓↓

地方でのアルバイトはかなり厳しい

地方はそもそもデザイン専門の会社が少なく、印刷会社が広告代理店の業務を担っていることがよくありますね。
2年ほど前、私の地元の印刷会社が出していた<フルタイムのアルバイト求人>を見かけました。

確かこんな求人だったと思います。↓↓

【仕事内容】DTPオペレーター兼デザイナー 【資格(必須)】 Photoshop、Illustrator 、indesign、実務経験2年以上
【給与】時給790円(経験により優遇)

結構びっくりしました。地方で雇われるのはやはりシビアだと感じます。

残業が多い

クライアントの急な依頼やトラブルにもすぐに応えなければならず、不規則な深夜残業や休日の仕事があったりするのもクリエイティブ職の特徴かもしれません。

求人情報・転職サイトDODA調査による「残業の多い仕事ランキング2020」による調査によると、

残業時間(月平均) : 25.5時間

残業の多い仕事ランキングの13位です。

毎日約1.2時間程の残業になる計算ですが、会社との契約にもよりますし、繁忙期なども影響があると思います。

私がインハウスデザイナーをしていた頃の経験では、毎日最低でも2時間以上残業があったなぁと記憶しています。
インハウスデザイナーで2時間程度ということは、デザイン会社になるともっと多くなる可能性が高いと思った方が良いでしょう。

グラフィック関係の制作は中小企業が大部分を占めています。
印刷業界は縮小しつつありますので、企業間の競争も激化しており、何でもかんでも請け負って大量の案件を抱えている会社があるのもこの残業問題に拍車をかけています。

裁量労働制のメリットとデメリット

クリエイティブ職によくみられる契約で”裁量労働制”というものがあります。
働いた時間ではなく、成果に対して給料が出るという労働形態です。
(例えば、1時間働いても10時間働いても<8時間労働分の給料がもらえる>という制度)

要は、「仕事さえ問題なくこなせばいつ出社してもいいし仕事終わったら自由に帰宅してOK」という雇用形態です。
仕事が早い人にとっては自由がきくワークスタイルなので、デザイナー向きであると考えます。

一方で、デザインの仕事はその特性上、締め切りのタイトさ、クライアントとのキャッチボール、修正の無限地獄など変数が多く、一筋縄では行かないことも事実です。

裁量労働制のメリットはありつつも、結局はその時間では終わらない量の仕事を振られるのでは?とネガティブに思ったりします。

みなし残業の影響

残業が出ることを見越して、残業代を最初から基本給に含めるという契約を”みなし残業”と言います。
残業せず定時で帰ってもその分の給料は引かれることはないので残業がほどほどの仕事であれば、みなし残業はメリットになります。

しかし、クリエイティブ職は一般的に、定時で帰れることは稀です。

みなし残業の金額は、〇〇時間分で〇万円と契約で決められており、もしそれ以上の労働があった場合には、時間外手当を支給しなくてはいけないのですが、現実的な話、ブラック気味な企業においては取り決められた時間以上に働かせる「働かせ放題の雇用契約」的な認識がある会社もあります。

実際に、昨今、大手広告代理店の違法残業がメディアで取り沙汰されています。徐々に改善の兆しはあるとはいえ、完全に根絶されたとは言い切れないでしょう。

また、残業代を含めている分、基本給が低く抑えられている可能性も忘れないでおきたいですね。

体力的にキツイ

デスクワークのキツさもクリエイターならではの悩みだと思います。
現役デザイナーの声をググってみると以下のような口コミを見つけました。

  • 基本ずっと座ってるので肩コリ・腰痛が酷い。
  • 眼精疲労・腱鞘炎。だんだん体が壊れていく。
  • 目が極端に悪くなっていく。運動不足になり体重増加。
  • アイディアが出なくて眠れない。
  • 印刷物のミスの責任に怯えるストレス

私が一番辛かったのは、「ミスへの精神的ストレス」です。

例えばチラシ制作。どんなに良いデザインを作ったとしても 0ひとつ、小数点ひとつ間違えただけで取り返しのつかない損害になります。
独立したタイミングで、この手の仕事はもうほとんど辞めました。

健康面でのリスクは、独立することによってかなり減らせる。

フリーランスとなることで、会社勤務だとなかなか出来ない、以下のことができます。↓↓

  • 仕事量の調整・労働時間の縮小
  • ノマドワーク・ワーケーション
  • 労働環境の改善(自動昇降デスクなどのアイテムを使って立ちながら仕事をするなど)

これらを試行錯誤することで、会社勤務の時と比べて健康リスク(腰痛や運動不足など)が大幅に改善されました。体力的にキツイと言う問題は、デザイナー職と言うよりも会社の労働環境に依存するものだと思います。

グラフィックデザイナーの将来性

グラフィックデザインと一口に言ってもこれから伸びていく分野とそうでない分野があるでしょう。

印刷系媒体はこの先、少し景気が悪いかもしれない。

webニュース、SNS、youtube…インターネットメディアが幅を利かせている現在では、新聞や雑誌などの印刷系媒体の売り上げが低迷しているのは事実です。

売れないとなれば、発行部数自体が減少します。するとそれらの制作に携わるグラフィックデザイナーに渡るお金が少なくなるのは自然なことです。

反対に、web系の仕事はこれから数年は需要が伸びていくことでしょう。

「物が売れない」この時代、企業は広告費を削減しがちなので、印刷広告のコストよりも一般的に安価なネット広告などに乗り換える可能性が高いというのも理由の一つです。

とはいえ、新聞や雑誌などの紙媒体のメディアがなくなるということはあり得ません。
時代の風向き次第で、戦い方が変わってくるということです。

地方においてはチャンスかも

地方で、雇われるのはかなり厳しいかなと思いますが、フリーランスだとむしろ優位なことも多いです。
地方においては、首都圏に比べてITリテラシー、技術共有が遅れているので、その優位性を持ち込むことで、むしろこれから地方にはビジネスチャンスがあるんじゃないかと個人的に考えています。

実際に、私の地域ではwebサイトやwebマーケティングの知識がある人が本当にいないので完全に売り手市場です。もしいるとしたなら月一で仕事を紹介したいくらい。

デザイン業の事業所数は近年、減っている

日本にあるデザイン事務所の規模はどうでしょうか?
経済産業省(特定サービス産業実態調査)による事務所数調査によると…

2006年:9,904件、2009年:10,578件、2012年:9,080件、2014年:9,010件
過去の推移をみると、2009 年には 10,000 超となりましたが、その後は減少が続いています。
そして、2018年には7,289件となっています。

2009 年から 2014 年の 5 年間に 15%の事業所数減少が見られ、厳しい業界環境がうかがえます。
経済産業省(特定サービス産業実態調査)より引用

クラウドソーシングなどの台頭で、フリーランスの数が増えていることや、
既成ロゴの販売のような安価なデザインの販売サービスが出てきたということも要因となり、
デザイン事務所は近年数が減っているという状況なのかもしれません。

デザインそのものの需要は上がっていく

とはいえ、デザイン自体の需要はどんどん上がっていくでしょう。

欧米では、デザインに先行投資を行う企業が高い競争力を持っているということが一般的に認知されています。
実際に、企業のデザインへの投資の有無によって4倍の利益差につながるとの調査もあります。

日本はまだまだビジネスの現場にデザイン・クリエイティブ思考を導入する文化がさほど浸透していませんが、その波は着実にきています。

2018年経済産業省・特許庁「デザイン経営」宣⾔が発表され、日本企業のデザイン導入を推し進めています。
デザインに対する補助制度の充実・税制の導入も検討されているようで、昨今ではデザイナーやクリエイターなどの専門職の採用を積極的に行い投資を拡大する一般企業も増えてきています。

「ブランディング」や「デザイン思考」のような言葉が一般的に浸透してきたのもここ数年の話です。
これから日本においてデザインの需要はこれから上がっていくことは間違いないと思います。

結局やめた方がいいのか?→デザインは習得すべきです。

ここまでを読んで「あ、大変そうだし辞めよ」と思った方もいるかもしれません。

これだけは断言します。「デザインスキル」は役に立ちます。

広告・商品・サービス、公共事業…etc 数えればキリがないほどデザインは、世の中に存在するあらゆるものに付加価値を与えます。

どの業界にも【デザインが全く必要のない、デザインを取り入れることがまったくの無意味】という会社はこの世に探しても見つけるのは難しいくらいです。

この先、デザインを学んでたとえデザイナーとして開業しなかったとしても、一度身に着けたデザインスキルは腐りません。

あなたの本業の【企画・商品開発・広報・販促等】の至る所に生かせる場面がありますし、もしこの先・自分のブランドを作る時、自分で会社やお店を立ち上げた時、オリジナルの商品を作るとき、あなたは誰の手を借りることもなく、自らのビジョンを持って仕上げることができます。

また、デザイナーは様々な業界の人から依頼が来るので、他の業界の事情に精通します。この経験はあなたが別のキャリアを歩むときの業界研究の際必ず生きてくるでしょう。

いざとなったら、またデザイナーに戻れる。

一度デザインスキルを身につければ、たとえ他業種への転職して失敗しても、あなたにはグラフィックデザインの知識があるのです。

デザイナーの働き方は自由度が高いので、結婚、出産、ノマドワーク、移住など、その都度、自分の状況に合わせてまた働くことが可能です。

デザインは…

  • 副業としてもできる
  • 在宅でもできる
  • 移住してもできる

一生使える技術を身につけるんだから大丈夫と自信を持って、ぜひデザインの勉強にトライしてみてください。

二足のわらじが生存戦略のカギ

これからのデザイナーは、一昔前のように、チラシだけ作るみたいな【一つのジャンルだけに絞って仕事をする】のはこの先どう考えても厳しいです

なぜなら、制作ソフトウェアや機材も年々安価になり一般に広く普及しました。
デザインを始めるハードルが低くなったのでプロが必要とされなくなってきてるシーンも増えました。
クラウドソーシングを利用してデザインを安く買うということも今や普通です。

じゃあ今後のデザイナーの生存戦略はどうするか?

あなたが持っている専門スキルを掛け算していくということが大事です。

例えば、あなたにもしも簿記の知識があったとしたら、「数字の読める」デザイナーになれます。
会社のブランディングの際、会社の経営状況を把握することからスタートすることが多々ありますが、デザイナーがバランスシートを読めるのであれば、経営戦略からデザインまで一貫してプロジェクトを担当することも可能でしょう。

このように、今まで違う業界にいて、これからグラフィックデザイナーとして転職や副業を始める人は、すでに専門知識があるので、デザインのスキルを加算することで、唯一無二の存在になれるはずです。

別のスキルをプラスして、その後、それに見合ったポジショニングをしていくことができれば、デザイナーとして成功するのは難しくありません。

むしろ現在の状況を新たなチャンスととらえどう波に乗っていけるかが、今後長く活躍し続けるデザイナーになるための分かれ道となるかもしれません。
昔は職人的な価値観があったデザインという仕事ですが、これからの時代は、様々な業界をまたいで見識がある人が生き残っていくのではないでしょうか。

今現在、全然違う業界に今勤めている人が、副業や転職を目的としてデザインを学ぶのは非常に強力だと考えています。

修行したら、さっさと独立しよう

もちろん待遇の良い会社に入ることができればそれがベストですが、このご時世、やはりきつい会社に当たるのも事実。
しかしデザイン会社の中にいるからこそ学べることがたくさんあります。

駆け出しの頃は本当に低い給料かもしれないし、激務かもしれません。
最初のうちは修行だと思って、とりあえず2-3年の実務経験をいただいて、人脈作ってスキルを盗んだら

さっさと独立するルートにGO!です。

独立することで、かなり自由度が上り、高収入も狙えます。

デザイン市場はまだまだ伸び代がありまし、デザイナーは地方では超人手不足です。
ぜひこの機会にデザインスキルを学ぶことを検討してみてください。

ここまで読んでくださりありがとうございました!
Twitterやってます。ぜひフォローお願いします